徒然

地方病院の研修医1年目です。学んだこと・考えたことのアウトプットの場です

腹痛の対応

救急外来で腹痛の患者さんが来た時に何を考えて対応するかまとめました。適宜改良していきたいと思います。

 

 

診察の流れ

  1. 問診
  2. 身体診察
  3. 検査
  4. 治療

1.問診

痛みの問診はOPQRSTを思い浮かべながら行います。以下は患者さんの答えに対して、鑑別に挙がる疾患です。

O(onset) & T(time couse)

突然:消化管穿孔、腹部大動脈瘤破裂、血栓塞栓性疾患、腸閉そく

急性:急性胆管炎、急性膵炎

徐々に:虫垂炎、憩室炎、腸炎、PID

発作的:結石疾患(胆石、尿管結石)

間欠的⇒内臓痛(管腔臓器、消化管蠕動、子宮収縮)を反映:腸閉塞、虫垂炎腸炎子宮筋腫

持続的⇒体性痛(固形臓器、腹膜への炎症)を反映:腹膜炎

 

P(position/provocative/palliative factor)

特定の食物摂取:高脂肪食⇒胆嚢炎、アルコール⇒急性膵炎

体動や歩行で改善⇒内臓痛

体動や振動で増悪⇒体性痛

 

Q(quality)

sharp pain(鋭痛):体性痛、粘膜関連、炎症関連

dull pain(鈍痛):内臓痛、管腔臓器関連、腫瘤性疾患

心窩部→臍部→下腹部:大動脈解離

心窩部→臍部→右下腹部:急性虫垂炎、憩室炎

右季肋部→右側腹部→右下腹部:十二指腸潰瘍、尿路結石

 

R(radiation)

背部へ:急性膵炎

右肩へ:急性胆嚢炎、肝膿瘍

左肩へ:膵尾部、脾臓

肩甲骨部へ:急性膵炎、胆嚢炎、横隔膜下膿瘍

精巣へ:尿路結石、急性虫垂炎、腹部大動脈瘤破裂

 

S(severity)

NRS、VASでスコアリング

 

その他問診で確認すべきことと、鑑別に挙がる疾患です

  • 食事内容、最終食事、最終排便、最終排ガスの有無
  • 嘔吐:腸閉塞、虫垂炎心筋梗塞、胆石、尿路結石
    性状の確認も重要です(胃液様:Vater乳頭よりも口側、緑色様:Vater乳頭よりも肛門側、糞便様:回腸末端閉塞)
  • 便秘:腸閉塞、骨盤内膿瘍、便秘症、虚血性腸炎
  • 下痢:急性腸炎虫垂炎、PID
  • 吐血:胃・十二指腸潰瘍
  • 便の性状(血便:虚血性腸炎、大腸炎 黒色便:胃・十二指腸潰瘍 白色便:閉塞性黄疸)
  • 不正性器出血:婦人科系疾患
  • 排尿時痛、血尿、頻尿、残尿感:泌尿器疾患

 

2.身体診察

診察の順番は、視診⇒聴診⇒打診⇒触診

腹壁の緊張をとるために膝を曲げてもらうのを忘れない

 

確認すべき所見を以下に挙げます。

視診:手術痕(腸閉塞)、腹部膨満(腸閉塞・便秘・腹水)

聴診:腸蠕動音(亢進、正常、減弱、消失)、血管雑音

打診:鼓音(腸閉塞)、肝叩打痛、CVA叩打痛

触診:硬さ(軟、硬、板状硬)、圧痛部位(McBurney圧痛点、Murphy徴候など)、筋性防御・反跳痛・Carnett徴候の有無(腹膜炎示唆)、ヘルニア(鼠径、大腿)、拍動性腫瘤(大動脈瘤

 

3.検査

血液検査、動脈血液ガス

  • 血算
  • 生化学

生化学で特に確認するべきものとしては

 

尿路結石の有無の鑑別に尿検査、妊娠を疑うなら妊娠迅速キット、STD疑いにクラミジアや淋菌の検査などを必要に応じて追加します。

 

心電図

心筋梗塞は必ず否定する、

 

腹部・胸部単純レントゲン写真

腸閉塞、消化管穿孔、尿路結石の診断に有用

 

腹部超音波

肝臓、胆嚢、腎臓、脾臓、膀胱、小腸の評価

 

腹部CT

単純、造影で撮影。出血を疑う場合は早期相と遅延相を加えた3相で撮影。腸閉塞を疑う場合は大腿骨頸部下位まで撮影する。

 

4.治療

急性腹症では循環血漿量は減少、不足状態であるため、細胞外液補充液による十分な初期輸液が必要。

 

鎮痛薬投与は診断を遅らせないので、早期に使用する。

カロナール®(1000mg、体重50kg以下なら15mg/kgを15分で投与)

 

【参考文献】

内科レジデントの鉄則(第3版)

当直ハンドブック Ver.2